瀬戸内へ行ってきました。今回は瀬戸内国際芸術祭の看板アイランドの直島と豊島です。この芸術祭はトリエンナーレだから3年ぶり。あいかわらずの瀬戸内の景観とアートが心地よい。この島だからか、外国人の来訪客も多く国際的にも知られ注目されているのだなという感が深い。芸術祭というからには音楽や芸能も含め総合的に展開されているのですが、やはり目につくビジュアルなものについてだけ感じたことなどを少し書いてみます。
2013年の前回訪問の時にも私も感じましたが、作品が玉石混合であるとか、何でもありのアートという印象とか、島の人々の生活感と遊離しているとか、いろいろな意見があります。しかし私は、それでも良いのじゃないかと思っています。少なくとも島の人々とこの芸術祭との関わりについては、決して遊離していないし無意味でもないと思います。なぜなら島の暮らしの佇まいのごくごく小さな端々にある変化や接した人々の素朴だけど情味のある態度などから、前回よりもそれを感じたからです。それ故、直島や豊島など観光スポットとしても既に定着したようなメインの島ではなく、よりマイナーな島へ、また会期中ではなく通常の年間にぜひ一度訪れて、それを確認したいと思っています。 作品については人それぞれに好き嫌いもあるでしょうが、「フォルム」「ディテール」「空間」「環境調和」「光」などアートのみならずデザインにも共通して求められるような要素について、作者が細かく推敲を重ねて制作したものは、やはり見応えもあるし感銘もおぼえます。身勝手なようですが、あたかもそれが人気のバロメーターのような混雑を別にすれば、この人気の両島で目玉になっているものの内には、一見の価値は充分にあると感じる作品があったと思います。
余談ですが、簡単に写真が撮れる昨今の世相から悪用誤用などを懸念してのことでしょうが、撮影禁止の制約があって記録に残したり写真で紹介できないのが多いのが残念です。そういえば前回のある会場では係の人に申し出てリボンを付けると写真OKという所もあったように思います。
【左】草間彌生の「南瓜」。宮浦港の岸壁にある「赤かぼちゃ」の方は公式ガイドブックの表紙にあるので、こちらの方を載せた。
【右】藤本壮介「直島パヴィリオン」。対岸から見たフォルムがキレイ。巻頭の写真は同作品の中から空を見上げたもの。蜃気楼のような浮島現象をイメージした軽快な作品で、外から内から絵になりやすいということは造形物として優れていることか。
【左】李禹煥美術館のフロントヤードにある李禹煥 (リ ウファン)「関係項ー対話」。鉄板と石を対置させたランドスケープ的な作品で巨視的にも美しいが、合わせた鉄板のスキ間を覗き見ると、鉄板裏面のマチエールが微視的に見て美しかった。
【右】安藤忠雄「ANDO MUSEUM」。地階天井の採光用としてなのか前庭に置かれたガラス製の覆い。オプティカルな効果が面白い。
【左】建築:西沢立衛「豊島美術館」にあるアート:内藤礼「母型」。誰もいない時に一人でここに座っていたら、座禅と同じ境地に入れるかも知れないと思わせる出来映え。ここは撮影禁止だがら入口越しに覗き見て撮ったので、その良さは表現できていない。
【右】建築:安藤忠雄「ベネッセハウス」にある安田侃「天秘」。この人の彫刻は人に寄りそい触覚的であると同時に非常に空間を意識させる。ここも撮影禁止だったようだが、触ってよいなら写真ぐらいはと盗み撮りさせてもらった。
【左】建築:三分一博志「直島ホール」。直島の自然条件を取り入れた設計は、屋根の頂を南北に貫く通気洞を通り抜けて行く風によって室内を自然換気し環境との調和が計られている。建物のシルエットも美しいが、この開口部が印象的だった。
【右】建築:西沢立衛「豊島美術館」。立地する周囲の景観との調和はもちろん、光や風など自然そのものがこの美術館にとっては切り離せない要素になっている。残照に染められた滑らかなドームは、地上に降り立ったUFOのようだった。
【左】ジョゼ・デ・ギマランイス「BUNRAKU PUPPET」。直島女文楽の形や動きをアイデアソースにした作品とのこと。この作品は昼よりも夜の方がイメージが伝わりやすいのではないかと思った。
【右】大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯」。この作品はある意味でスゴイのだが、アートとしては夜の印象の方が妖しい雰囲気があって私は好きだ。銭湯として地域に溶け込んでいるようなので、それが一番よいことだと思う。
島風物アート
これはオマケのブロックです。アート作品ではない直島や豊島の普通の風物を切り取ると、これが意外とアートなんですね。この他にも島の人達が手作りしたものでイイなと思える創作物もあったのですが、作為的でないものだけを集めています。とにかく、そんな味のある風景や雰囲気があちこちする瀬戸内は、ほんに良い所。